押し迫って来ましたね 〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。

  


23日の祭日がいい陽気だっただけに、
翌日の54年ぶりという初雪はとんでもない出来事で。
某女学園界隈は積もるほどではなかったものの、
それでもいきなりの気温の急降下は、
可憐なお嬢様がたに 文字通り“身がすくむ想い”をさせまくり、

「まだ11月よ、11月。」

忌々し気に言う七郎次だったのは、
大方 愛しの勘兵衛様が、
しょむない(ことはないですが…)交通整理の助っ人に担ぎ出されでもしていたか、
メールでもラインでも捕まらなかったかららしく。
捕まらないのはいつものことじゃあ…なんて
それこそ言わずもがななツッコミなんて致しません。

「だよねぇ。」

うんうんと頷いた平八が、

「上着も出してなかったから、慌てた慌てた。」

ひなげしさんがというんじゃなくて、
学校から帰ったら丁度配達に出かけるところの五郎兵衛とすれ違いになりかかり、
Tシャツ姿だったのへぎょっとして、
せめて何か羽織ってと引き留める騒ぎになったとか。
この顔触れで寒さに弱いというと、紅ばらさんこと久蔵だが、
そちらさんはといえば、

「イヤーマフにストールぐるぐる巻き、
 心なしかコートもスカートも長めというスタイルで
 湯気上げながら登校して来ましたものね。」

「〜〜〜。////////」

見ないふりなんて却ってつれない、それほどの大仰な次第。
だったのを、七郎次が目許を和ませ、
平八が軽くからかうように口にしたのも
コトの次第を知っておればこそで。
というのも、校医さんでもある榊せんせえが、
風邪を拾ったら大変だからと、
天気予報を調べたうえで三木さんチへ前のりし。
やっぱり極寒となったのを確かめてから、
出来ることなら車で送ってってやりたいが、
そこは校則で禁じられているものだから、
せめてと用意したのががっつり防寒しなさいという
途轍もない重装備だったそうで。
あれでは汗が冷えて却って風邪ひいちゃいますと、
過保護の方向性へ七郎次が保健室まで苦言を告げに行ったのもワンセットで、
紅バラ様苦難の日となりもした雪の一日だった。

「それでなくたって、試験前で休めないってのに」
「そうそう。」

目前に迫った12月ののっけに控えているのが期末テストで、
5日から始まって1週間。
それさえ乗り切れば、後は所謂 試験休み、
終業式までの半月程が補習のある人部活のある人のみの登校日となり、

「今年は23日が終業式なので短い中休みじゃありますが。」

その分 冬休みの始まりも早いと、はしゃぐ人も多かりしだとか。
年末から新年まで、家族そろって国外脱出し海外で過ごすというお宅も多く、

「クリスマスミサは成績にも関係しないし、強要されてませんしね。」

とはいえ、賛美歌を斉唱するコーラス部は登校するし、
そうなれば伴奏のピアノを弾く紅バラ様の
ご尊顔を拝したいというシンパシィの顔ぶれも来る。

「アタシも行きますよvv」
「あ、もちろん、私もvv」

今日は何とか陽気も多少はよくなったため、
教室の窓辺にも柔らかな陽射しが陽だまりを作っており。
特にクリスチャンではないけれど、
お友達が礼拝用の特別な制服を着てピアノを奏でる麗しい姿は拝したいし、

「そのあとで、八百萬屋へも寄ってってくださいね?」

特製のクリスマス仕様のプチタルト、作ることになってますからお土産にと、
甘味処の看板娘な平八がにっこり微笑う。
…って、なんか試験の話はどこ行ったんだという流れになってる彼女らで。

「神々しい笑顔ですわねvv」
「試験前ですのに、さすがは余裕でおられる♪」

聖女揃いのクラスメートの皆様は、
いつも堂々としていなさる三華様方だからと、
そんなような純粋無垢な想いを口々に述べられているけれど…

「クリスマスかぁ。」

もうそんな時期なのねぇと感慨深い声を出す白百合さんなのへ、
お顔を見合わせた紅ばらさんとひなげしさん。
先の祭日、陽が落ちるのも早くなった街がイルミネーションに飾られてたのを観て、
同じような言いようをしていたくらいだ、今初めて気づいたわけでもないだろに。
お年頃の娘さんがそんないかにもな日を想うと来れば、

「訊くのも恐ろしいですが、シチさん、何か予定がおありですか?」
「恐ろしいってのは何ででげすか。」

妙な気の回しようはやめてくださいよと、
怒った真似で目許をきゅうと座らせてから、
だがだがすぐにもやんわりほどくと、

「例年と変わりませんよ。
 さすがにクリスマスちなみの予定はありませんが、
 それでも父様の納会ぽい集まりの幾つかへ引っ張り出されることでしょし。」

お友達と騒ぐ分には空いてるぞと、
にっこり笑った細おもてが、だがだが
事情が通じているこちらにはちょっぴり痛々しく映りもし。
和風の甘味処ではあるが、それでも美味しいと評判の店なのが仇になり、
クリスマスも店は忙しいだろうからお手伝いをする平八や、
都内どころか日本のという冠をいただくような舞台でも有名なホテルJゆえ、
支配人の両親はどうかするとすでに年末年始モードで奔走中、
早くも顔を見ない日が始まっているほどな久蔵自身も、
政財界で“ご意見番”と呼ばれるレベルの大御所のクリスマスパーティーに
あちこちからお呼びがかかってもいるらしい紅ばらさんとしては。

“忙しい私たちはしょうがないとして…”
“……。(頷、頷)”

こんなときこそ気の利くお誘いが出来なくてどうしますか、役立たずと、
ややもするとそれこそ狭窄的な見方だが、
それでも、彼のお髭の警部補殿への恨み節をついつい紡いでもしょうがなく。
あんな野暮天でもこちらの草野さんちのお嬢さんには、
伸ばした深色の髪も顎髭も、歳の割に鍛え抜いた強かな肢体も
精悍でカッコいい、それは凛々しい殿方に違いないらしく。
そのお姿を見る機会や、傍に居られる機会、
少しでも持ちたいと思うのは自然なことだろて。

「…。」
「そですね。やっぱりここは私たちが。」

清楚なセーラー服にもようよう そぐう、
冬の日を眩しげに双眸細めて見上げる白百合さんの横顔を、いたわるように見やりつつ。
クリスマス前や年末は物騒な世相となるのは世の常だから、
ここいらのパトロールにいそしみましょう。
そうやって“頑張れば”、
誰かさんも雷を落とさざるを得ないからと注視を向けざるを得なくなりましょう…なんて。
どっかで本末転倒なことをしっかと決意し、
目と目を見かわした平八と久蔵だったなんて、
保護者の皆様に伝わったら…
やっぱり勘兵衛様が甲斐性を見せろと叱られそうだというのに1億ペリカ。





   〜Fine〜  16.11.25


 *なし崩しの極みですいません。
  押し迫って来たなぁという実感と共に忙しい学生さんに捧ぐ。
  …というか、こちらのお嬢さんたちって、
  家の都合や何やで結構忙しいかもなと思ったんですよね。
  ヘイさんだって、アメリカの実家から帰省しないのかとか訊かれるかもだし。
  そういうのをこなしつつ、年末のパトロールも手を抜かない。
  抜いてほしいと懇願した方がいいぞ。
  若しくは忘年会とかパーティーを設けるとかさ、大人の皆様。(笑)

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